生成AIの活用が、映像制作の現場にも広がっている。ドラマ制作では、爆発事故などの大規模な映像表現や医療シーンの加工、撮影前の完成イメージの共有など、さまざまな工程でAIを利用する動きが出てきた。
こうした中、フジテレビは2026年11月5日、湾岸スタジオに生成AI活用の実験場「AI Sandbox」を設置し、本格運用を進めていると発表した。
すでにドラマ『救命病棟24時』など複数の作品で活用しており、一部の工程では従来の手法と比べて最大70~80%の作業工数削減につながったという。
2026年10月期からは毎クール1本以上を「AI強化枠」とし、2027年10月をめどに、制作するすべてのドラマでAIを活用できる体制を整える方針だ。
ドラマ制作にも広がる生成AI
今回の発表で紹介されているのは、単純にAIで映像を作るという使い方だけではない。
『救命病棟24時』では、第1話の爆発事故シーンでAIが生成した架空の空撮映像に煙を合成する手法が使われた。
医療シーンの映像処理や、実際の撮影だけでは再現が難しい場面にも活用されている。
また、撮影前に生成AIで映像の完成イメージを作り、スタッフ間で共有するといった使い方もある。
実写撮影やCG、VFXなどと組み合わせながら、AIを使えるところに取り入れていく形のようだ。
AI映像は安っぽくなる?
今回のニュースには、AIを使うことで映像が安っぽくなるのではないか、といった否定的なコメントも多く見られた。
確かに、現在の生成AI映像には不自然さが残ることもある。人物の動きや背景など、細かい部分で違和感を覚えることもあるだろう。
ただ、CGが登場したころも、最初は不自然さが目立っていた。
当時は作り物っぽさが強く、実写映像の中にCGが入ると違和感を覚えることも多かったが、今では自然に見られる映像も増えている。
生成AIも、これから技術が進歩し、制作する側も使い方に慣れてくれば、徐々に違和感がなくなっていくのではないだろうか。
今はまだ気になる部分があっても、数年後には普通にドラマの中に溶け込んでいるかもしれない。
制作コストの面でも大きな変化
今回の導入には、フジテレビを取り巻く経営環境も関係しているのかもしれない。
CM出稿の見合わせなどもあり、業績面で厳しい状況を経験してきたフジテレビにとって、制作コストの削減は重要な課題の一つだろう。
ドラマ制作には、撮影スタッフや出演者の人件費、ロケーション費用、セット制作、CGや映像加工など、多くの費用がかかる。
これまで大掛かりな撮影や映像加工が必要だった場面をAIで補えるのであれば、制作側にとってもコストや作業時間を見直すきっかけになる。
今回発表された70~80%の工数削減も、一部の工程とはいえ、映像制作の変化を感じさせる数字だ。
生成AIで映像制作はどう変わるのか
CGがそうだったように、生成AIも登場当初は違和感を指摘されることが多い。
しかし、技術の進歩や制作現場でのノウハウの蓄積によって、映像表現は変わっていく。
生成AIも、今後どこまで自然な映像を作れるようになるのか、また実写やCGとどのように使い分けられていくのか。
テレビドラマだけでなく、映画やCM、Web動画など、映像制作全体に関わる変化になっていきそうだ。






