
2025年4月、WordPress 6.8が正式にリリースされました。今回のメジャーアップデートでは、ウェブサイトの表示速度や編集体験といったパフォーマンスの大幅な改善、デザインやコンテンツ制作を支援する新機能の追加、セキュリティの強化、そして誰もが使いやすいプラットフォームを目指すアクセシビリティの向上が実現されています。実際に、私が運営する別サイトでは、このアップデートによりPageSpeed Insightsのスコアが75点から93点へと顕著に向上しました。本記事では、その実感も交えながら、WordPress 6.8がもたらす魅力的な進化について詳しくご紹介します。
パフォーマンスの飛躍的な向上:投機的読み込みと各種最適化
WordPress 6.8における最大の注目点の一つが、パフォーマンスの向上です。サイトの読み込み速度や管理画面での編集体験を快適にするため、様々な最適化が施されました。
特に画期的なのが、投機的読み込み(Speculative Loading)の導入です。この機能は、ユーザーがリンク上にマウスカーソルを合わせた際やクリックする可能性が高い場合に、リンク先のページコンテンツをバックグラウンドで事前に読み込みます。これにより、ユーザーが実際にリンクをクリックした際には、ほぼ瞬時にページが表示されるようになり、非常にスムーズなブラウジング体験を提供します。この機能は最新のブラウザ技術を活用しており、対応していない古いブラウザでは機能しないだけで、サイト表示に影響を与えることはありません。
さらに、ブロックエディターの応答性向上、ブロックタイプの登録処理の効率化、データベースクエリキャッシュの最適化なども行われ、サイトの編集から閲覧に至るまで、あらゆる操作がより軽快になりました。前述の通り、私のサイトではPageSpeed Insightsスコアが75から93へと大幅に改善し、特にモバイルでの体感速度向上が顕著でした。これは、ユーザー体験の向上に直結する重要な改善点と言えるでしょう。また、インタラクティブな要素の応答性を高める「Interactivity API」の基盤も、このバージョンで導入が開始されています。
スタイルブックの進化:デザイン管理がより直感的に
テーマ全体のデザイン要素(色、タイポグラフィ、レイアウトなど)を一元管理できる「スタイルブック」機能が、WordPress 6.8で大幅にリニューアルされ、さらに使いやすくなりました。
新しいスタイルブックでは、設定項目が構造化されたレイアウトで表示され、各セクションに明確なラベルが付与されました。これにより、目的の設定項目を素早く見つけ、サイト全体のスタイルを直感的に調整できます。「外観」メニュー内の「デザイン」からアクセス可能で、CSSの知識がなくても、プレビューを確認しながらリアルタイムで変更を適用できます。クラシックテーマを使用している場合でも、`editor-styles`や`theme.json`ファイルに対応していれば、この新しいスタイルブックを利用できます。
エディターの改善:コンテンツ制作をスムーズに
日々のコンテンツ制作の中心となるブロックエディターも、WordPress 6.8でさらに使いやすく進化しました。
管理画面のリスト表示機能である「Data Views」では、表示オプションが整理され、より見やすくなりました。また、投稿一覧などを表示する「Query Loop」ブロックでは、特定の投稿(例えば「先頭に固定表示」にした投稿)を除外する設定が簡単に追加できるようになり、コンテンツの表示制御がより柔軟に行えます。
これら以外にも、エディター全体にわたって細かな改善が多数施されており、ブロックの操作やページ全体の構築がよりスムーズかつストレスフリーに行えるようになっています。
セキュリティ強化:bcrypt採用でより安全なサイト運営
ウェブサイトの安全性を維持するためのセキュリティ強化も、WordPress 6.8の重要なアップデート内容です。
今回のバージョンから、ユーザーパスワードのハッシュ化(不可逆的な暗号化)に、より強力なアルゴリズムであるbcryptが標準で採用されました。bcryptは、パスワードを解読するために必要な計算量を大幅に増加させるため、万が一データベースからパスワードハッシュが漏洩した場合でも、元のパスワードを特定されにくくします。この強化は、特別な設定を行うことなく、WordPress 6.8にアップデートするだけで自動的に適用されます。サイト運営者としては、こうした基盤部分のセキュリティが自動で向上するのは非常に心強い点です。
アクセシビリティの大幅な改善:誰にとっても使いやすく
WordPressは、誰もが情報にアクセスし、発信できるプラットフォームであることを目指しています。WordPress 6.8では、その理念に基づき、100項目を超えるアクセシビリティの修正と強化が実施されました。
これには、WordPressに同梱されているデフォルトテーマ、ナビゲーションメニューの管理画面、カスタマイザー、そしてブロックエディターなど、広範囲にわたる改善が含まれています。具体的には、スクリーンリーダー利用時の読み上げ改善、キーボード操作の最適化、UI要素のラベル表示の明確化など、70以上の改善が行われました。これにより、視覚や操作に制約のあるユーザーを含め、すべてのユーザーにとってより使いやすいプラットフォームへと進化しています。
【実体験】PageSpeed Insightsスコアが75点から93点へ!
冒頭でも触れましたが、私が運営する別サイトでWordPress 6.8へアップデートしたところ、Google PageSpeed Insightsのモバイルスコアが75点から93点へと劇的に改善しました。特に、ページの表示速度やインタラクティブ性に関する指標が向上し、ユーザーにとってより快適な閲覧体験を提供できるようになったと実感しています。この結果には、前述の「投機的読み込み」機能や、各種キャッシュ、スクリプト読み込みの最適化が大きく貢献しているものと考えられます。
まとめ:WordPress 6.8でサイト運営を次のレベルへ
WordPress 6.8は、パフォーマンス、デザイン、編集体験、セキュリティ、アクセシビリティという、ウェブサイト運営における重要な側面すべてにおいて、大きな進化を遂げたバージョンです。「投機的読み込み」による表示速度の高速化、改良されたスタイルブックによるデザイン管理の効率化、bcrypt採用によるセキュリティ基盤の強化、そして100を超えるアクセシビリティ改善は、サイト運営者と訪問者の双方にとって大きなメリットとなるでしょう。
まだWordPress 6.8へアップデートされていない方は、ぜひこの機会に検討してみてください。あなたのサイトでも、私のようにパフォーマンスの劇的な向上が見られるかもしれません。アップデートはWordPressの管理画面から簡単に行えますが、万が一に備え、事前に必ずサイト全体のバックアップを取得してから実行することをお勧めします。